毎晩、ほぼ同じ時間にそれは起きる

うちの子が眠るのは、たいてい夕食のあとだ。 ソファの端か、私の足元か、どちらか。

しばらくすると、耳が動く。次に前足が、ピクッと。
くうくうと、小さな声が漏れることもある。

(なんの夢を見てるんだろう)と思いながら、ずっと眺めていました。

あれが何なのか、調べてみることにしました。

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犬にも、夢を見るための時間があった

眠りには段階があります。

深い眠りで体を休める「ノンREM睡眠」と、脳が活発に動き続ける「REM睡眠」。人間が夢を見るのは、主にREM睡眠の時間帯です。眼球がすばやく動き、呼吸が不規則になり、手足が動くこともある。

犬にも、まったく同じ状態があります。

ブダペスト大学のボーディジュ研究チームは、犬の睡眠を詳しく記録しました。眠り始めてしばらく経つと、犬の脳波はREM睡眠特有のパターンを示す。眼球が動く。呼吸が乱れる。前足や耳が、ピクッと震える。

ああ、あれか、と思いました。

夢を見ているかどうかを直接確かめる方法はありません。でも、同じ睡眠の仕組みが働いているなら、同じことが起きていると考えるのが自然です。あの子はたぶん、何かを追いかけていた。

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学んだ夜の脳は、ふだんと違った

では、なぜ眠っている間に足が動くのでしょうか。

ハンガリー科学アカデミーのキシュ研究チームは、2017年に犬の睡眠と記憶の関係を調べた研究を発表しました(Kis et al., 2017、Scientific Reports)。

まず15頭の犬に、脳波の電極をつけて眠ってもらいました。ある日は「新しいコマンドを覚える課題」のあとに眠り、別の日は何も学ばずに眠る。その違いを、脳波で比較したんです。

結果は明確でした。新しいコマンドを覚えた後の眠りは、何も学ばなかった日の眠りと脳波のパターンが違っていました。深い眠り(ノンREM)では特定の波が増加し、夢の眠り(REM)でも変動が見られた。そして、この変化が大きかった犬ほど、翌日に新しいコマンドをよく実行できていました。

犬は眠りながら、記憶を整理していた。
それが脳波として見えていた。

研究者たちはこれを「犬において睡眠依存的な記憶固定化を示した最初の証拠」と表現しています。人間と同じメカニズムが、あの子の中でも働いていた。

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あの夜、何かを繰り返していたのかもしれない

同じ研究で、もう一つ驚いたことがありました。

53頭の犬が、新しいコマンドを覚えたあとに4つのグループに分かれました。それぞれ1時間、①眠る②散歩する③別の新しいコマンドを学ぶ④遊ぶ、のどれかをします。1週間後、最初に覚えたコマンドをどれだけ覚えているか確認しました。

眠ったグループ、散歩したグループは、ちゃんと覚えていました。

でも、別のコマンドを続けて学んだグループは——1週間後も、最初のコマンドをほとんど覚えていなかったんです。

(え、消えた?)

訓練のあとすぐ別のことを教えると、前に学んだことが上書きされてしまう可能性がある。研究者はこれを「干渉」と呼びます。人間の勉強でも起きることですが、犬にも当てはまった。

遊んだグループも、直後はパフォーマンスが落ちていました。興奮や感情的な高ぶりが、一時的に記憶の定着を妨げるようです。ただしこちらは、1週間後には回復していました。

あの子に一度にいろいろ教えようとしていた日々が、少し頭をよぎりました。

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眠ることが、あの子への最後の贈り物だった

訓練のあと、あの子が眠る。

ソファで丸まって、少しして足がピクッと動く。それはたぶん、昼間に覚えたことを、脳がもう一度なぞっている時間です。声をかけなくていい。起こさなくていい。ただそこで眠らせてあげること。それがあの子への、一番大事な仕上げになっていた。

今夜あの子が眠るとき、脳は静かに昨日の続きをやっています。