「子犬のうちに、いろんな人に会わせておいた方がいい」という話を聞いたことがある方は多いと思います。

それは正しいのですが、その話には続きがあります。「いろんな人に会わせる」ことの効果は、生後14週という時間的な限界を前提にしている——という話です。その期限を過ぎると、何を経験させても「取り戻せない部分」が出てくる可能性があります。

うちの子を迎えたのは生後8週だった、という方が多いはずです。その時点でまだ6週間あった。でも、日々の仕事の忙しさや、ワクチンが終わるまで外に出せないという判断から、最初の数週間をほとんど室内だけで過ごさせた、という経験もあるかもしれない。あるいは、外には連れていったけど、見知らぬ人に積極的に触ってもらうことはしなかった、という場合もあるかもしれません。

オーストラリア・La Trobe大学のHowell、King、Bennettの研究チームが2015年にVeterinary Medicine: Research and Reports誌に発表したレビュー論文が、この問いを丁寧に整理しています。子犬の社会化に関する研究の知見を幅広く検討した論文で、「いつ・何をすれば良いのか」「子犬教室は本当に効果があるのか」という実践的な問いに向き合っています。

14週という、窓が閉まる日

子犬の発達には、3つの重要な時期があります。

最初の「一次期」は生後3週ごろまで。目や耳がまだ機能していないため、母親の世話に完全に依存していますが、この時期に毎日やさしく触れられた子犬は、8週齢のときに比較的穏やかな行動を示したという研究があります。目が開く前から、人間との接触は記録されているわけです。

次が「社会化期」、生後3〜12週ごろ。遅くとも14週まで。このレビューが最も強調しているのは、ここに「窓」があるという事実です。 1961年のScott & Fullerによる研究(今も動物行動科学の教科書に載り続けている原典)が示したのは、生後14週までに人間と接触がなかった子犬は、成犬になっても人間と普通の関係を結べなかったという結果でした。その窓は、一度閉まると戻らない。

また、社会化期を通じて、子犬はどの刺激が危険でどの刺激が安全かを学んでいきます。生後5週の子犬はすべての大きな音と見知らぬ環境に強い恐怖反応を示しますが、定期的な接触と経験を通じてその恐怖が和らいでいく、とレビューは述べています。問題は、その学習が起きるためには「経験」が必要だということです。何も経験させなければ、「とりあえず怖い」という初期設定が更新されないまま残る可能性があります。

別の観察もあります。1999年の研究では、1歳になるまで人間と接したことのなかった犬はサーチゲームを学習できませんでしたが、生後4ヶ月まで人間と過ごした後に人間から引き離された犬は、それよりも良いパフォーマンスを示しました。たった4ヶ月の経験でも、何かが違った。

「最初の3ヶ月が全てを決める」と言われるような言い方がありますが、研究が実際に示しているのはそれに近いことです。

社会化は14週で終わらない

ただし、14週で「終わり」ではありません。

3つ目の時期は「充実期(エンリッチメント期)あるいは若年期」と呼ばれ、性成熟までの期間です。この時期に初めて経験するさまざまな環境・人・動物・音が、成犬になってからの行動に影響する可能性があることも、レビューは指摘しています。ワクチン接種が完了して外の世界に安全に出られるようになった頃——ちょうど12週前後——は、この「充実期」の入口でもあります。

論文は「社会化は子犬期から成犬期を通じて継続すべきプロセスである」と述べています。14週という窓が閉まっても、その後の経験が成犬の行動に何も影響しないわけではありません。ただ、ある種の「初期設定」が定まるのが14週前後だ、というのが研究が示している事実です。

社会化はワクチン接種が終わった後も続けていく必要があります。「子犬期に済ませた」で終わりにするのではなく、若い犬を世界のさまざまな経験にさらし続けることが、行動の安定につながる可能性があります。

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子犬教室は、意外と効果がはっきりしない

「子犬教室に行けばいい」という答えは、実はそれほど単純ではありません。

いくつかの研究では、子犬教室の参加と成犬後の社交的な行動・問題行動の少なさとの相関が見られました。見知らぬ人への攻撃リスクの低下、里親返還リスクの低下なども報告されています。一方で、子犬教室に参加しても行動に明確な差がなかったという研究も存在します。

ある研究では、典型的な家庭環境で育つ子犬はすでに日常的な刺激に十分にさらされており、追加のクラスが目立った改善をもたらさない可能性を示唆しました。ガイドドッグプログラムでも、追加の社会化クラスが成功率に影響を与えなかったという研究があります。

なぜ結果がばらつくのかについて、論文は一つの可能性を挙げています。多くの国では子犬教室に認定制度がなく、スキルや経験が十分でないインストラクターが運営しているクラスも存在します。社会化にはある程度のマイルドなストレスが伴いますが、過度なストレスを与えると逆効果になる可能性もあります。運営の質が低いクラスは、社会化の場ではなくストレスの場になりかねない。

子犬教室が良くないということではなく、「どんなクラスか」「どう運営されているか」が効果を左右する可能性が高いということです。参加を検討する際は、クラスの設計や運営者のアプローチも確認する価値があります。

窓が開いている間に、何ができるか

この論文から引き出せる最も実践的な結論は、次のことだと思います。

生後14週までの間に、子犬に「安全な人間と接触する経験」をできるだけ多く積ませること。それは子犬教室である必要はなく、日常の暮らしの中でさまざまな年齢・外見・声の人間に会う機会であっても構いません。重要なのは「経験の量と質」であり、「どのクラスに行ったか」ではないかもしれない。

論文は「適切な社会化が行われた子犬は成犬後に問題行動を示しにくい」という点では一致していると述べています。攻撃性や恐怖反応の低さ、人間との積極的な関わりの多さ——これらは、社会化期に何を経験したかと相関していた。

社会化は「多ければ多いほど良い」わけでもない、とも述べられています。「最低限どのくらい必要か」「それ以上で効果がなくなる上限はあるか」は現在でもまだわかっていない、と論文は正直に書いています。大事なのは量を詰め込むことではなく、子犬が安心して新しい体験に向き合えるような形で接触を積み重ねることです。

14週という数字は、知っておく価値があります。これが「生後3ヶ月まで」を指しているとしたら、子犬を家に迎える8〜12週という時期は、その窓がまだ開いている間の、最後の数週間にあたります。あの頃の日々は、あなたが思っているより重要だったかもしれない。

社会化は子犬期だけに済ませるものではなく、生涯を通じて続くものでもあります。それでも、あの小さな体が初めて世界に出た頃の時間が、後のあの子の「怖さの感度」をある程度決めていたとしたら——今日の散歩での出会いの一つひとつが、少し違って見えてきます。